記帳代行のメリット・デメリット|相場や依頼する際のポイントまで解説

記帳代行のメリット・デメリット|相場や依頼する際のポイントまで解説

記帳代行は膨大な記帳業務をアウトソーシングしてくれるので、経理担当者が別業務に時間を割くことがきるようになります。しかし、費用感などがわからないと検討しにくいでしょう。本記事を読めば、記帳代行サービスのメリット・デメリットや依頼できる業者、選定ポイントなどがわかります。ぜひご活用ください。

目次
  1. 1. 記帳代行とは
  2. 2. 記帳代行サービスを利用するメリット
    1. 2-1. 記帳業務にかかる工数を削減できる
    2. 2-2. 記帳ミスが軽減する
    3. 2-3. 本業に集中できる
    4. 2-4. 合わなければ業者を変更できる
  3. 3. 記帳代行サービスを利用するデメリット
    1. 3-1. コストがかかる
    2. 3-2. 記帳業務のノウハウが溜まらない
    3. 3-3. 業績をすぐに把握できない
  4. 4. 記帳代行依頼で用意する書類
  5. 5. 記帳代行を依頼できる業者と費用相場
    1. 5-1. 税理士事務所
    2. 5-2. 記帳代行業者
    3. 5-3. 会計ソフト
    4. 5-4. フリーランス
  6. 6. 記帳代行を依頼する際のポイント
    1. 6-1. 資料は整理して渡す
    2. 6-2. 税理士は在籍しているか確認する
    3. 6-3. 依頼する業務範囲を明確にする
    4. 6-4. 違法業者ではないか確認する
    5. 6-5. 事前に見積もりをとる
    6. 6-6. 最低契約期間の有無を確認する
    7. 6-7. 情報管理体制は整っているか確認する
    8. 6-8. コミュニケーションは取りやすいか確認する
  7. 7. 記帳代行について概要やメリット・デメリットを解説しました

記帳代行とは

記帳代行とは、記帳業務を代行してくれるサービスです。

ビジネスの場では、仕入、販売、出入り業者への支払い、といった金銭のやり取りが日々発生しています。これらのやり取りを会計上では「取引」と呼びます。そして、事業主は日々の取引を記録した帳簿を作成・保管しなくてはいけません。この帳簿をつけることを「記帳」と呼びます。

記帳は取引量の多い事業主ほど大変な作業です。業種にもよりますが、大きな企業ほど取引量は増加しますので、記帳する量も膨大になります。経理など専門の部署がある企業はいいですが、事務仕事を兼務している場合は業務を圧迫してしまうことも。さらに、記帳は2014年から義務化されているため後回しにするわけにもいきません。

本業が忙しくて記帳業務まで手が回らない方のために、記帳業務を代行してくれるのが「記帳代行」です。記帳代行を利用すれば、経理業務をしている方にとって多くのメリットがあります。

記帳代行サービスを利用するメリット

記帳代行サービスを利用するメリット

記帳業務にかかる工数を削減できる

記帳代行に依頼すれば、工数を大幅に削減できます。なぜなら、記帳業務は単純に取引内容を記録すればいい、というものではないからです。たとえば、企業の取引ではリース契約や外貨取引などで内容が複雑になることは珍しくありません。また、会計ルールに基づいてデータを整理するのは専門的な知識が求められます

ほかにも、金融取引ではその都度発生するデータを集計し、帳簿へ反映させなければいけません。日々の取引内容を取りまとめて記帳するだけでも膨大な工数が発生してしまうのです。これらの作業を記帳代行に依頼できれば、大幅な工数削減が期待できるでしょう。

記帳ミスが軽減する

記帳ミスが減らせるのも記帳代行に依頼する大きなメリットの1つ。記帳は複雑な内容の取引もあり、ミスするリスクが高い業務です。さらに、断続的に業務が発生するため、疲労による入力ミスの可能性もあります。

記帳代行は記帳業務の専門家であるため、業務ミスだけでなく単純なエラーにも対策を講じてくれます。その結果、帳簿のミスが減りスムーズな経理処理が期待できます

本業に集中できる

記帳代行で工数が削減できた結果、本業に集中できるメリットも大きいでしょう。記帳業務を習得・熟練するまでの工数をコアビジネスに集約すれば、より多くの成果を生み出せる可能性があります。

業務経験がない従業員が記帳業務を担当すれば、スムーズに記帳できるまでに多くの時間が必要です。記帳ルールやイレギュラー対応など、業務知識に加えて会計知識も身につけなくてはいけません。ならば、初めから記帳代行に依頼してしまったほうが企業の業績を伸ばす、より重要な業務に集中できるでしょう。

合わなければ業者を変更できる

記帳代行の業者はたくさんありますが、選んだ業者が自社とマッチするとは限りません。その点、記帳代行は1か月単位での契約が多いため、合わなければ変更するのが容易です。担当者とコミュニケーションが取りにくい、仕事のクオリティに問題がある、より条件のいい業者を見つけた場合は気軽に変更できます

税理士事務所の場合は1年単位での契約が多く、合わないと思ってもすぐに替えられないのが難点ですが、記帳代行なら乗り換えやすいのはメリットといえるでしょう。

記帳代行サービスを利用するデメリット

記帳代行サービスを利用するデメリット

コストがかかる

当然ながら、記帳代行に依頼するには一定のコストが発生します。もちろん税理士に記帳代行をするのに比べれば安価です。しかし、記帳代行は仕訳数で料金が変動するため、大量の仕訳が必要な場合は予算を圧迫する可能性があります。依頼する際には見積もりをとっておくことが重要です。

また、記帳代行を依頼するのであれば、毎年予算を確保しておくことをおすすめします。その上で、費用対効果が見合うのかを検討しましょう。

記帳業務のノウハウが溜まらない

記帳業務を内製化したい場合は、代行業者に依頼してしまうとノウハウが溜まりません。外注業務は業務プロセスを可視化できないため、従業員が記帳業務を理解するのには相当な時間がかかる、もしくはまったく理解できない可能性が高いでしょう。

そのため、記帳代行に依頼する際は業者と情報を連携・共有できるかが重要になります。また、内製化を目指すのであれば社内トレーニングや教育プログラムを提供することも視野に入れてください

業績をすぐに把握できない

記帳代行は、依頼してから成果物が提供されるまで一定のタイムラグが発生します。もちろん、社内で記帳する場合でも時間はかかりますが、代行業者に頼めば成果物が返ってくるまでより多くの時間がかかるでしょう。そのため、業績を確認して意志決定をしたり、業務データを他部署に連携したりする場合など、記帳代行がボトルネックになる可能性があります。

よりスムーズにデータを連係したいのであれば、会計ソフトの導入やデータ管理ツールの活用がおすすめです。

記帳代行依頼で用意する書類

記帳代行に依頼する際には下記表の書類を用意しておきましょう。記帳代行は企業の取引内容を代わりに記帳する業者ですので、必要書類が不足したままでは記帳データが不完全になってしまう恐れがあります。また、領収書はコピーではなく原本を用意しましょう。領収書の仕訳は不要です。

円滑に依頼するためのポイントは、書類を分類して必要な情報にアクセスしやすくしておくことです。そのためにも、日頃から書類を整理していつでも提出できるようにしておくことをおすすめし
ます

分類

書類

給与に関する書類

賃金台帳、給与明細など

売上に関する書類

請求書控え、売上管理表など

現金の入出金に関する書類

領収書、現金出納帳など

預金収支に関する書類

通帳コピー、振込明細など

立替金に関する書類

クレジットカード明細など

買掛金に関する書類

支払管理表、請求書など

記帳代行を依頼できる業者と費用相場

主に記帳代行業を営んでいるのは税理士事務所、記帳代行業者の2つです。そのほか、自社でやるのであれば会計ソフトを使えば記帳できますし、フリーランスで記帳代行を請け負っている人を探すのも手です。以下に費用相場をまとめました。

依頼先

費用相場(月額)

メリット

デメリット

税理士事務所

法人 4万円~

個人事業主 3万円~

・ワンストップで

 経理業務を任せられる

・サービスの質が高い

・料金は高め

・年間契約で変更しにくい

記帳代行業者

100仕訳 1万円前後

・料金が安い

・短期契約で利用しやすい

・サービスの質が安定しない

・税務申告などはできない

会計ソフト

2,000~3,000円

・低コストで導入可能

・自社で入力する

 手間がかかる

フリーランス

相談次第

・よい人材を

 低コストで確保できる

・信頼性を確認しにくい

税理士事務所

税理士事務所は、主に企業の税務相談や税務申告などを受けていますが、記帳代行も依頼できます。ただし、税理士事務所に依頼するメリットは記帳から税務申告までワンストップで行える点でしょう。それだけでなく、記帳から税務申告まで依頼すれば経営戦略や効果的な節税対策など、多角的なアドバイスをもらえる点も見逃せません。

つまり、税理業務をトータルで依頼することで、税理士事務所のメリットは最大化しやすくなるといえます。税理士事務所にスポットで記帳代行を依頼するのであれば、割安な記帳代行業者のほうがおすすめといえます。

記帳代行業者

記帳代行業者は、税理士事務所に依頼するよりも安価で契約できるのが魅力。また、年間ではなく月単位で契約ができるので、合わない業者だったら乗り換えやすいのが特徴です。費用は仕訳数に応じて変動する従量課金タイプが多く、100仕訳で1万円前後が相場です。

ただし、あくまで相場ですので、業種や求めるサービスによって料金が変動することは覚えておきましょう。急ぎの場合は特急料金(3~5割アップ)やレポートの作成がオプションで選択できる業者も存在します。

会計ソフト

会計ソフトは、各取引を入力し、自動で仕訳までしてくれるため、記帳代行を依頼せずに自社で記帳したい場合におすすめです。とくに、1度取り込んだデータは各台帳に自動で連携されるため、転記ミスがなく効率的に業務を進められます。

会計ソフトは、基本的にクラウドサービスが多く導入も手軽です。セキュリティがしっかりしたサービスを選べば、情報漏洩の心配が軽減されるでしょう。

フリーランス

フリーランスで記帳代行を請け負っている人もいます。クラウドソーシングサービスなどで探せば候補を見つけられるでしょう。ただし、相場は人によってそれぞれですので相談して費用を決めることになります。また、本人がどの程度のスキルがあるのか、実績はあるのかなどを見極める必要もあるため、慎重に選定することをおすすめします。

自社の取引内容は機密情報の塊です。機密保持契約も結べると望ましいでしょう。

記帳代行を依頼する際のポイント

記帳代行を依頼する際のポイント

資料は整理して渡す

記帳代行を依頼するのであれば、領収書や請求書などは整理しておきましょう。書類が整理されていないまま依頼してしまうと、書類整理の料金が追加で発生する可能性があるからです。単純に種類や月次で分類できていることも重要ですが、必要なデータがすべて揃っているかという点も確認しておくとよいでしょう。

データが揃っていないと「数字が合わない」といった問い合わせが来ることになり、予定以上に時間がかかってしまう可能性があります。

税理士は在籍しているか確認する

記帳代行業者に依頼する場合は税理士が在籍しているかも確認しておきます。記帳代行業者は資格がなくても名乗ることができるため、中には悪質な業者も存在します。もちろん、税理士がいなくても優良な業者はいますが、業者によってサービスの品質が安定しない可能性はあるでしょう。

もし、税理士がいない業者の場合は、採用基準をチェックしてみましょう。採用ページで「日商簿記3級以上もしくは同等の実務経験」といった文言があれば、一定以上の品質を確保している業者であると判断できるからです。

依頼する業務範囲を明確にする

自社が経理業務に関してどこまで外注したいのかを明確にしておきましょう。具体的には、記帳だけでなく税務申告や年末調整も任せたいのか。もし税務申告や年末調整まで任せたいのであれば、税理士事務所を検討したほうがトータルで任せられます。

「記帳代行は代行業者」「税務申告や年末調整は税理士事務所」というような依頼の仕方をすると、かえって費用が高くなる可能性があります。税理士事務所であれば、顧問料としてトータルで見てくれるだけでなく、経理面や節税など相談にも乗ってくれるため、費用対効果は高いといえます。

違法業者ではないか確認する

税務申告や年末調整は税理士でないとできない業務です。もし、税理士が在籍していないのにオプションで税務申告を提案してくる記帳代行業者がいたら違法業者の可能性があるため注意しましょう。税務申告は納税者本人または税理士しかできないからです。

税務申告のほかにも税理士には独占業務が存在します。税理士が在籍していないにもかかわらず以下のサービスを提供している場合は違法の可能性が高いので注意してください。

  • 税務代行(税務申告など)
  • 税務書類の作成
  • 税務相談を行うこと

ちなみに記帳代行は税理士法違反にはあたらないので安心してください。

事前に見積もりをとる

記帳代行は、基本料金とオプション料金が設定されているケースが多く、最終的な費用が読めません。そのため、自社が依頼する場合はいくらになるのか事前に見積もってもらいましょう

  • 仕訳数はどの程度あるのか
  • 納期は急ぐのか
  • 会計ソフトへのデータ入力は必要かなど

どこまで依頼するのかを明確にしておくことで、実際の費用感が見えやすくなります。よくわからないまま依頼してしまうと、トラブルにも繋がるので注意しましょう。

最低契約期間の有無を確認する

最低契約期間はあるのかを確認しておくと、解約時のトラブルを防げます。なぜなら、記帳代行業者は1か月契約が多いですが、中には最低契約期間を設定している業者もあるからです。もし、契約したもののサービスが自社のニーズと合わない場合、契約を解除できないと時間も費用も余計にかかってしまう危険性があるでしょう。

そのため、最低契約期間はあるのか、中途解約するなら違約金はいくらなのかなどを事前に確認しておくことをおすすめします。

情報管理体制は整っているか確認する

情報管理体制が整っているかはとても重要です。企業機密である取引情報をすべて共有しても問題ない業者であることは必須条件といえるでしょう。

そのため、自社の資料をどのように取り扱う予定なのか、情報セキュリティ対策はしっかりされているのかは事前に確認しておきたいポイントです。もし、依頼時に情報管理についてしっかり説明できない業者であれば、情報管理がずさんな可能性があります。契約前に質問しておくと安心できるでしょう。

コミュニケーションは取りやすいか確認する

記帳代行業者はたくさんいますが、担当者がコミュニケーションを取りやすいかは重要です。たとえば、こちらの要望をしっかりくみ取ってくれない担当者がついてしまうと、コミュニケーションコストが負担になるでしょう。

また、問題点や疑問点が出てきたときに、相談しやすい雰囲気の担当者であるかも重要です。少しでも疑問点があればしっかり相談できたほうが仕事を円滑に進められるからです。コミュニケーションを続けていく内に信頼関係が構築されれば、長く付き合っていける業者になるでしょう。

記帳代行について概要やメリット・デメリットを解説しました

記帳代行は、企業の記帳業務を代行してくれるサービスですが、税理士事務所や代行業者で任せられる業務範囲が異なります。自社が任せたい範囲を明確にしておくことで、どの業者に依頼するべきか絞りやすくなるでしょう。記帳代行を検討するのであれば、ぜひ本記事のポイントを参考にしてみてください。