税理士の報酬相場|報酬が変動する要因・知っておきたい税理士選びのポイントを解説!
税理士との顧問契約を検討しているが、税理士の報酬相場はどのくらい?税理士を見極めるには?独立・起業したばかり、またはビジネスを成長させたい法人 / 個人事業主なら知りたいはず。そんな方に向け、税理士の報酬相場や報酬が変動する要因を紹介するとともに、知っておきたい税理士選びのポイントを解説していきます。
税理士報酬はどうやって決まる?報酬の内訳
税理士報酬とは、税理士が提供するサービスの対価として支払う費用のこと。つまり、税理士にどのような業務を依頼するのか、税理士が提供しているサービスからなにを選ぶのかによって税理士報酬額は決まります。
具体的には、大きく3種類に分類できる「契約形態」からなにを選ぶかが基本。そして、基本業務以外の「オプションサービス」から、なにを選んで追加するかです。
契約形態
税理士との契約形態には「顧問契約」「スポット契約」の2つがあり、顧問契約はさらに「定期面談型」「決算・申告型」の2つに分類できます。顧問契約とは、税務指導や経営に関するアドバイス、各種書類作成のサポートを継続的に受けられる契約のこと。
たとえば「顧問契約(定期面談型)」なら、半年 / 四半期 / 月ごとなど、契約内容に応じた定期面談時に、都度、税務指導 / 経営サポートを受けられます。1年契約の随時更新、確定申告や決算・申告は別料金、月額の顧問報酬を毎月支払うことが一般的な契約内容です。
一方の「顧問契約(決算・申告型)」は、年に1回、確定申告や決算・申告時のみ、税務指導や経営サポートを受けられる契約のこと。確定申告 / 決算・申告代行の料金のみとなるため、税理士報酬の総額を抑えたい場合に有効な契約です。ただし、継続的な関わりが困難なため、臨機応変な経営アドバイス、年間を通じた節税対策は受けにくい一面もあります。
また、顧問契約のほかに「スポット契約」を受け付ける税理士もいます。スポット契約とは、確定申告 / 決算・申告代行のみ提供する契約形態のこと。顧問契約(決算・申告型)と変わらないように見えますが、経営アドバイスや節税対策はほぼ受けられません。顧問契約を前提とする税理士も少なくないため、スポット契約を希望する方は確認が必要です。
契約形態 |
主なサービス内容 |
メリット |
デメリット |
おすすめの方 |
顧問契約 (定期面談型) |
・記帳チェック ・試算表作成 ・税務相談 ・経営アドバイス ・節税対策 ・決算書作成 / 申告 (別料金) |
税理士による定期的チェックにより、 会社の経営状態を把握できる |
月々の顧問報酬が必要 |
事業が成長して 規模の大きくなりつつある会社 |
顧問契約 (決算・申告型) |
・記帳チェック ・税務相談 ・節税対策 ・決算書作成 / 申告 |
税理士報酬を抑えながら 税務相談できる |
臨機応変な経営アドバイスや 年間を通じた節税対策は受けにくい |
税理士報酬を抑えたい 個人事業主、中小企業 |
スポット契約 |
・記帳チェック ・決算書作成 / 申告 |
必要なときだけ税理士に依頼できる |
経営アドバイスや節税対策は ほぼ受けられない |
起業したばかりの 個人事業主、法人、スタートアップ |
オプションサービス
顧問契約、スポット契約は、税理士の独占業務である「税務相談」「税務書類の作成」「税務申告代行」を活かした基本サービスです。一方、付加価値としてさまざまなオプションサービスを用意する税理士も少なくありません。
- 記帳代行
- 給与計算
- 年末調整
- 税務調査の立会
オプションサービスのほとんどは、税理士との顧問契約締結が前提。また、税理士事務所 / 税理士法人によって、提供できるオプションサービスは異なります。
なぜ税理士報酬は変動する?報酬が変動する要因
契約形態の違い、オプションサービスの有無以外にも、さまざまな要因で税理士報酬は変動します。主な要因は「売上規模・従業員数」「面談回数」「サービス内容」です。
売上規模・従業員数 / 面談回数
会社の売上規模・従業員数が大きくなれば、領収書 / 請求書などの証憑類も増えるため、税理士の仕事量も増えます。つまり、売上規模・従業員数に比例して、月額顧問料や確定申告 / 決算・申告の税理士報酬は高額になる傾向にあります。
また、同じ理由で年間の面談回数が多くなるほど、月額顧問料は高額になる傾向にあります。定期面談型顧問契約の場合、別料金となる確定申告 / 決算・申告報酬は「月額顧問報酬の4〜6か月分」が一般的なため、決算時に支払う税理士報酬にも影響するでしょう。
サービス内容
定期面談型顧問契約の月額顧問料は、サービス内容によっても変動します。たとえば、事業計画書、事業承継、M&Aなど、近年税理士のサービス領域は広がりを見せていますが、相談内容が広範になれば、税理士報酬も高額にならざるを得ません。
一方、記帳チェックや財務状況の確認・報告など、基本的な会計・税務業務のみを依頼したいのなら、相対的に月額顧問料を抑えられます。
税理士の報酬相場
税理士報酬が決まる仕組み、変動する要因を理解できたところで、目安となる税理士の報酬相場を、個人事業主 / 法人に分けて紹介していきましょう。
個人事業主の税理士報酬相場
まずは、個人事業主が「顧問契約(定期面談型)」を締結した場合の税理士報酬相場です。別料金となる確定申告の報酬目安もあわせて紹介します。
事業者の年商 |
月額顧問料の目安 |
確定申告の報酬目安 |
500万円未満 |
10,000円程度 |
40,000円〜60,000円程度 |
500万円〜1,000万円未満 |
10,000円〜 |
50,000円〜70,000円程度 |
1,000万円〜3,000万円未満 |
15,000円〜20,000円程度 |
70,000円〜120,000円程度 |
上述した税理士報酬相場に記帳は含まれていません。日々の記帳 / 帳簿作成を代行して欲しい場合は、別途、記帳代行報酬が必要です。費用目安は1仕訳あたり50円〜100円程度。月100仕訳までなら、月額10,000円程度の予算を見ておきましょう。
次に、個人事業主が確定申告のみ依頼した場合の税理士報酬相場です。記帳が済んでいる場合、確定申告とともに記帳代行も依頼する場合に分けて紹介します。
事業者の年商 |
確定申告の税理士報酬目安 (記帳 / 仕訳なし) |
確定申告の税理士報酬目安 (記帳 / 仕訳あり) |
500万円未満 |
50,000円〜 |
100,000円〜 |
500万円〜1,000万円未満 |
70,000円〜 |
150,000円〜 |
1,000万円〜3,000万円未満 |
100,000円〜 |
200,000円〜 |
3,000万円〜5,000万円未満 |
150,000円〜 |
250,000円〜 |
「顧問契約(決算・申告型)」を選択する場合は、税理士報酬相場もやや高額になる傾向にあります。
法人の税理士報酬相場
法人が「顧問契約(定期面談型)」を締結した場合の税理士報酬相場です。個人事業主よりやや高めになる傾向にあるのが法人の特徴。別料金となる決算・申告の報酬目安もあわせて紹介します。
年商 |
月額顧問料の目安 |
決算・申告の税理士報酬目安 |
2,000万円未満 |
30,000円程度 |
120,000円〜180,000円程度 |
2,000万円〜3,000万円未満 |
35,000円〜 |
150,000円〜210,000円程度 |
3,000万円〜5,000万円未満 |
50,000円〜 |
200,000円〜300,000円程度 |
5,000万円〜1億円未満 |
70,000円〜(要相談) |
280,000円〜420,000円程度 |
1億円〜3億円未満 |
85,000円〜(要相談) |
340,000円〜510,000円程度 |
記帳代行を依頼する場合の税理士報酬は個人事業主と変わりありません。また、決算・申告のみの税理士費用も個人事業主と大きく変わりませんが、法人の場合、年商が大きくなると受付が難しくなる傾向にあるようです。
知っておきたい税理士選びのポイント
税理士報酬の相場や仕組み、依頼できる業務はだいたい把握できた。では、税理士選びで失敗しないためにはどうしたらいいのか?そんな方に向け、ヒントとなる税理士選びのポイントをいくつか紹介していきます。
税理士に依頼したい業務を明確化
顧問契約を結んで継続的な税務アドバイスをして欲しいのか、特定の会計・税務業務をサポートして欲しいのか、税理士に依頼したい業務を明確化しましょう。基本的な契約形態があるとはいえ、税理士によって受付可能な契約形態やオプションサービスはさまざまだからです。
たとえば、税理士報酬を抑えたいが、節税に関するアドバイスも欲しいというケースなら、決算・申告型の顧問契約がベスト。しかし、年に1度では適切なアドバイスができないという理由で、決算・申告型やスポット契約を受け付けていない税理士もいます。思い違いによるトラブルを避けるためにも、依頼内容を明確にしておくことが重要です。
報酬相場だけで判断しない
税理士報酬はできる限り安く抑えたい、相場よりも高額な税理士は敬遠したい、そう考えるかもしれませんが、税理士の選定を報酬相場だけで判断するのは危険です。なぜなら、税理士報酬の相場は「税理士が手厚くサポートする」場合と「職員が対応して税理士がサポートする」場合の報酬額が混在しているからです。
当然ですが、税理士が手厚くサポートする場合の報酬は、相場に比べて高額になりがち。とにかく相場よりも安くしたいという点を重視すると、充分なサポートを得られない可能性もあります。だれがどのようにサポートしてくれるのか?事前に確認し、報酬額との兼ね合いを考えながら選定することが重要です。
税理士の得意分野 / 業界・業種
業界・業種を含め、得意としている分野を見極めることも、税理士を選定する際のポイントです。具体的には、自社ビジネスの業界・業種の知見が豊富な税理士を選定するのがおすすめ。同じ目線で話ができることはもちろん、適切なアドバイスを得やすいからです。
相続や不動産売買に関わる譲渡など、税務はビジネスに限らない幅広い分野が対象。当然、税理士によって得意とする分野は異なります。相続分野で定評のある税理士であっても、ビジネス分野の実績がなければ、適切なサポートは得られません。
スピーディーな対応
対応の素早さも税理士を選定する上での重要なポイントです。ビジネスではお金の流れが経営に直結するため、都度、適切な判断を求められます。アドバイスが欲しい肝心なときに連絡がつかないのでは、顧問契約を締結する意味が薄れてしまいます。
問い合わせ時の対応、質問に対するレスポンスなど、契約を締結する前に税理士や担当者の対応 / 反応を見極めましょう。
税理士との相性 / 考え方
意外に思われるかもしれませんが、税理士との相性や考え方の違いを見極めることは極めて重要。なぜなら、会社を税務・会計面で支える税理士とは、円滑にコミュニケーションの取れる良好な信頼関係が欠かせないからです。
たとえば、税金は国民の義務だからキチンと納めるべきという考えの税理士の場合、できる範囲での節税をしたいという事業主とは相入れない関係性になりかねません。もちろん、節税できる場合でも、あえてしないという選択肢はあります。なぜそうなのか?という点をじっくりと話しあえる関係性でなければ、今後のビジネス展開に支障が生じます。
税理士報酬を最適化するには
報酬額だけで税理士を選定するのは危険。とはいえ、できる限り支出を抑えたいのは、どのような事業者であっても同じでしょう。では、支払う税理士報酬を最大限活かし、コストを最適化するにはどうすべきか?
「税理士には、税理士にしかできない業務を任せ、できることは自分自身でやる」ことです。たとえば、日々の記帳、帳簿作成は自身でやるなど。近年は優秀なクラウド会計ソフトが安価に使えるため、こまめに記帳していれば自動的に必要な書類を作ってくれます。
それを税理士にチェックしてもらいながらアドバイスを得ることで、経営における会計・税務の考え方を学べます。同じ意識を共有できれば、より良い方向へ軌道修正するための議論もできるかもしれません。
【まとめ】税理士の報酬相場・税理士選びのポイントを紹介しました
独立・起業したばかり、またはビジネスを成長させたい法人 / 個人事業主なら、税理士の報酬相場や、税理士を見極める方法を知りたいはず。そんな方に向け、税理士の報酬相場や報酬が変動する要因を紹介するとともに、知っておきたい税理士選びのポイントを解説してきました。
税理士との契約を検討する際、報酬相場が気になるのは会社経営者であれば当然のこと。しかし、税理士は、会計・税務面から会社を支えてくれる、個人事業主・会社経営者の良き相談相手となる存在です。報酬ばかりに捉われるのではなく、末長くいい関係性を築けるかを考えることが重要です。